電気回路

RLC共振回路・Q値とは?[図で解説]

2021年9月20日

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本記事の内容

本記事では、RLC直列回路における共振現象について解説しています。

  • RLC直列共振回路の動作
  • 共振回路の等価回路
  • Q値

RLC直列共振回路

インピーダンス・共振角周波数

抵抗 \(R\)、インダクタ \(L\)、キャパシタ \(C\) を直列に接続した交流回路を考えます。

このとき、回路全体のインピーダンス \(Z\) は以下で表されます。

$$ Z=R + \jj \left(\omega L - \dfrac{1}{\omega C}\right) $$

複素インピーダンスやフェーザの電圧・電流が複素数であることを明確にするために、文字の上にドットをつけて \(\dot{Z}, \dot{V} , \dot{I}\) と表記することもありますが、本記事では用いないものとします。

ここで、インピーダンス \(Z\) の虚部が \(0\) となる角周波数 \(\omega_0\) は

$$ \omega_0 L - \dfrac{1}{\omega_0 C} = 0 $$
$$ ∴ \hspace{5mm}\omega_0 = \dfrac{1}{\sqrt{LC}} $$

となり、共振角周波数と呼ばれます。

等価回路による解析

直列RLC回路に共振角周波数 \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\) の交流信号を入力するとき、回路全体のインピーダンスは \(Z=R\) になります。

よって、共振回路はインダクタ\(L\)とキャパシタ \(C\) を短絡した回路と等価になります。

共振角周波数の信号を入力したときの等価回路

ここで、インダクタ \(L\) とキャパシタ \(C\) にかかる電圧 \(V_L, V_C\) を求めてみましょう。

回路に流れる電流は \(I=E/R\) で与えられるので、

$$ V_L = \jj\omega_0 L I =\jj\frac{\omega_0 LE}{R} = \jj\dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}} $$
$$ V_C = \frac{I}{\jj\omega_0 C} = \frac{E}{\jj\omega_0 CR} = -\jj\dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}} $$

と表されます。瞬時値 \(v_L(t),v_C(t)\) へ変換すると

$$ v_L(t) = \mathrm{Re}[V_L\ee^{\jj\omega_0 t}] = \mathrm{Re}\left[\dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}}\ee^{\jj(\omega_0 t+\frac{\pi}{2})}\right] = \dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}}\cos{\left(\omega_0 t+\frac{\pi}{2}\right)} $$
$$ v_C(t) = \mathrm{Re}[V_C\ee^{\jj\omega_0 t}] = \mathrm{Re}\left[\dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}}\ee^{\jj(\omega_0 t-\frac{\pi}{2})}\right] = \dfrac{E}{R} \sqrt{\dfrac{L}{C}}\cos{\left(\omega_0 t-\frac{\pi}{2}\right)} $$

となります。

\(\jj=\ee^{\jj\frac{\pi}{2}},\,-\jj=\ee^{-\jj\frac{\pi}{2}}\) を用いて式を変形しています。詳しくはフェーザオイラーの公式を参照してください。

2式より、インダクタ \(L\) とキャパシタ \(C\) に発生する電圧は、同振幅で逆位相になっていることがわかります。

したがって、インダクタとキャパシタにかかる電圧の和は常に \(0\) になり、等価的に短絡とみなすことができます。

Q値

Q値は共振の周波数特性の鋭さを表す尺度で、共振回路の特性を表す重要な指標の一つです。本節では、Q値の定義とRLC直列共振回路のQ値を具体的に求めます。

定義

電源電圧の大きさ \(|E|\) を一定にし、角周波数 \(\omega\) を変えたときの電流の大きさ \(|I|\) をプロットすると、電流の周波数特性が得られます。

得られた周波数特性から、電流の大きさが共振時の \(1/\sqrt{2}\) 倍(\(-3\,\mathrm{dB}\))になるときの角周波数を\(\omega_1, \omega_2(\omega_1 < \omega_2)\) とすると、共振回路のQ値は次式で定義されます。

$$ Q := \dfrac{\omega_0}{\omega_2 - \omega_1} $$

分母の \(\omega_2 - \omega_1\) は半値全幅(full width at half maximum:FWHM)と呼ばれ、電力が最大値の半分になる2つの角周波数の差を表します。電力 \(R|I|^2\) が半分のとき、\(|I|\) は最大電流の \(1/\sqrt{2}\) 倍になることに注意してください。

Q値の分母、分子は共に角周波数なので、Q値は無次元量になります。

Q値の式から、\(\omega_1, \omega_2\)の差が小さいとき、Q値は大きくなります。

RLC直列共振回路のQ値

RLC直列共振回路のQ値を求めてみましょう。

半値の定義より、\(\omega_1,\omega_2\) は次式を満たします。

$$ \dfrac{|I(\omega)|}{|I(\omega_0)|} = \dfrac{|E|/|Z(\omega)|}{|E|/R} = \dfrac{R}{|Z(\omega)|} = \dfrac{1}{\sqrt{2}} $$

ただし、電流とインピーダンスが角周波数 \(\omega\) に依存することを明記しました。

上式を二乗して変形すると

$$ \dfrac{R^2}{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2} = \dfrac{1}{2} $$
$$ \left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2 = R^2 $$
$$ \omega L-\dfrac{1}{\omega C} = \pm R $$
$$ L\omega^2 \mp R\omega - \dfrac{1}{C} = 0 $$

なる角周波数の二次方程式が得られます。よって、角周波数の解 \(\omega_1<\omega_2\) は、\(\omega>0\) に注意して

$$ \omega_1 = \dfrac{-R + \sqrt{R^2+\dfrac{4L}{C}}}{2L},\quad \omega_2 = \dfrac{R + \sqrt{R^2+\dfrac{4L}{C}}}{2L} $$

となります。したがって、角周波数の差は

$$ \omega_2 - \omega_1 = \dfrac{R}{L} $$

となり、Q値は

$$ Q = \dfrac{\omega_0}{\omega_2 - \omega_1} = \dfrac{1}{R}\sqrt{\dfrac{L}{C}} $$

となります。

具体的に、\(L = 10\,\rm{mH}\), \(\require{textcomp}C = 1\,\rm{\mu F}\) として、抵抗値を \(R=100\,\Omega, 10\,\Omega\) それぞれに変えたときの電流の大きさの相対値 \(|I|/|I|_{\rm{max}}\) をプロットしたものを示します。

確かに、Q値が大きい方が、鋭い周波数特性が得られているのが分かります。

参考文献

  • 奥村浩士(2002)『エース電気回路理論入門 (エース電気・電子・情報工学シリーズ)』朝倉書店
  • 大下眞二朗(1979)『詳解電気回路演習 上』共立出版
  • 榊米一郎・大野克郎・尾崎弘(1980)『大学課程電気回路(1) (第2版)』オーム社

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