本記事の内容
- ガウスの発散定理の定義・直感的なイメージ・証明を理解する。
- ガウスの発散を用いた例題を解く
ガウスの発散定理

ベクトル場を \(\bm{A}\) 、閉曲面 \(S\)で囲まれた立体の内部を \(V\) とすると、次式が成立します。
$$ \int_V \nabla\cdot\bm{A} dv = \int_S \bm{A}\cdot\bm{n} dS \label{eq:1}\tag{1} $$
ただし、\(\bm{n}\) は曲面 \(S\) の内側から外側に向かう向きの単位法線ベクトルです。
直感的な理解
ガウスの発散定理がなぜ成り立つのか、直感的なイメージで理解してみましょう。

図のような微小な立方体の正味の湧き出し量 \((\nabla \cdot \bm{A})\Delta V \)は、各6面におけるベクトル場とその面積をかけることで与えられます。すなわち、
と表せます。ただし、 \(A_{i}\) は各面におけるベクトル場の法線成分、 \(\Delta S\) は立方体の面積になります。
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div(発散)の意味とは?[例題付き]
ここで、立方体を2つ連結した時を考えてみましょう。

それぞれの立方体の正味の湧き出し量を計算し、その和をとれば立方体2つの正味の湧き出し量が得られます。
このとき、連結した境界面において、ベクトル場の大きさは等しく、向きが逆になっています。
したがって、立方体2つが合わさった立体について、各6面のベクトル場とその面積をかければ、正味の湧き出し量が得られることになります。
同様の議論が \(x,z\) 軸方向に連結した時にも成立します。
任意の閉曲面は無限小の立方体に分割できるので、結局のところ、分割した立方体の湧き出し量の和は、閉曲面の表面におけるベクトル場の法線成分と面積の積に等しくなります。
これが、ガウスの発散定理の意味するところです。
証明

閉曲面 \(S\) が \(z\) 軸に平行な直線と \(z=z_1, z_2 (z_1 > z_2)\) で交わるとします。
閉曲面 \(S\) の \(xy\) 平面への正射影を \(D\) とおき、 \(D\) を底面とする柱体と閉曲面 \(S\) が接する境界を \(L\)、\(L\) を境界として上側の曲面を \(S_1\)、 もう片方を \(S_2\) とします。
式 \eqref{eq:1} の左辺は、3重積分を用いて、以下で表されます。
ここで、\(\partial A_z/\partial z\) の項を考えます。式変形により
が成り立ちます。正射影と面積の関係より、曲面上の面積 \(dS\) とその \(xy\) 平面への正射影について、\(dS\) の法線ベクトルと \(z \) 軸とのなす角を \(\theta (0^\circ \leq \theta \leq 90^\circ)\) としたとき、以下の関係が成立します。
\(z\) 軸方向の単位ベクトル \((0,0,1)\) と曲面 \(S_1 \)上の単位法線ベクトル \(\bm{n}=(n_x,n_y,n_z)\) との内積をとることで、
が成り立ちます。曲面 \(S_2\) 上では、法線ベクトルの \(z\) 成分は負になるので、\((0,0,-1)\) との内積を考えることで
が成り立ちます。以上より、
閉曲面を \(xz, yz\) 平面に正射影したときにも成立するため、
がいえます。したがって、
例題:球
原点を中心とする半径 \(r\) の球の内部を \(V\), 表面を \(S\) とする。ベクトル場 \(\bm{A}=(2x, 3y, z)\) について、以下を求めよ。
参考文献
- 安達忠次(1961)『ベクトル解析』培風館