ベクトル解析

スカラーポテンシャルと存在条件[例題つき]

2021年11月13日

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本記事の内容

本記事では、スカラーポテンシャルについて解説しています。

  • 定義
  • 存在条件
  • 例題

スカラーポテンシャルとは

ベクトル場 \(\bm{A}(x,y,z)\) に対して、以下が成立するスカラー関数 \(\phi(x,y,z)\) を、\(\bm{A}\) のスカラーポテンシャル、あるいは単にポテンシャルといいます。

スカラーポテンシャル
$$ \bm{A} = -\nabla \phi = -\left( \frac{\partial \phi}{\partial x},\frac{\partial \phi}{\partial y},\frac{\partial \phi}{\partial z}\right)\label{eq:1}\tag{1} $$

スカラーポテンシャルの存在条件

ベクトル場 \(\bm{A}\) がスカラーポテンシャル \(\phi\) を持つ条件は以下になります。

スカラーポテンシャルの存在条件
単連結な領域 \(D\) に定義されたベクトル場 \(\bm{A}\) について、以下は等価になります。
  1. \(\bm{A}=-\nabla\phi\) を満たす \(\phi\) が存在
  2. \(\nabla\times\bm{A} = 0\)
  3. 領域 \(D\) に含まれる任意の閉曲線 \(C\) について、\(\oint\bm{A}\cdot d\bm{s} = 0\)
  4. 領域 \(D\) の2点 \(P,Q\) について、\(-\int_P^Q \bm{A}\cdot d\bm{s} = \phi(Q)-\phi(P)\) となり、積分経路によらない値になる。

単連結な空間とは、その空間内の任意のループが連続的に1点に収縮できるような空間を言います。ひもで輪を作り、その両端を引っ張ったとき、どこにも引っかからずに結び目をなくすことができる、というイメージです。

ここでは厳密な証明は行いませんが、1. \(\rightarrow\) 2. に関しては、ベクトル解析の公式を用いることで容易に確認できます。

$$ \nabla\times\bm{A} = -\nabla\times(\nabla\phi) = 0 $$

例題

ベクトル場 \(\bm{A}(x,y,z) = \bm{r} = (x,y,z)\) に関して、以下を考えてみましょう。

(1) \(\nabla\times\bm{A} = \bm{0}\) を示せ

(2) \(\nabla|\bm{r}|^2 = 2\bm{r}\) を利用して、スカラーポテンシャル \(\phi\) を求めよ。ただし、\(\phi(0,0,0) = 0\) とする。

解答
(1)

\( \nabla\times\bm{A} \) の \(x\) 成分は

$$
\frac{\partial z}{\partial y} - \frac{\partial y}{\partial z} = 0
$$

同様に \(y,z\) 成分についても調べれば、 \(\nabla\times\bm{A} = \bm{0}\) が成立。

(2)

(1) より、

$$
\bm{A} = -\nabla\phi
$$

なるスカラーポテンシャル \(\phi\) が存在する。与式より、

$$
\bm{r} = \frac{1}{2}\nabla |\bm{r}|^2
$$

なので、任意定数を \(C\) として、

$$
\phi = \frac{1}{2}|\bm{r}|^2 + C = \frac{1}{2}(x^2+y^2+z^2) + C
$$

\(\phi(0,0,0) = 0\) ゆえ、\(C=0\) 。よって、求めるスカラーポテンシャルは

$$
\phi = \frac{1}{2}(x^2+y^2+z^2)
$$

参考文献

  • 山本有作・石原卓(2020)『理工系の数理 ベクトル解析』裳華房

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