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本記事の内容
本記事では、バイポーラトランジスタの動作原理について解説しています。
- npn型・pnp型の構成
- エネルギーバンド図
バイポーラトランジスタ
バイポーラトランジスタ(bipolar junction transistor: BJT)は、pn接合が背中合わせに接続されたトランジスタです。
そもそもトランジスタとは、小さな電気信号を増幅させたり、スイッチのON/OFFを切り替える用途で使われる素子です。
バイポーラトランジスタは、npn型・pnp型の2種類があります。
上図にnpn型とpnp型のバイポーラトランジスタの記号を示します。
Bはベース(base)、Cはコレクタ(collector)、Eはエミッタ(emitter)と呼ばれます。
記号の矢印は、電流の流れる向きを表しています。
npnトランジスタ
ここでは、npnトランジスタの構成・バンド図・電流や電圧の特性について解説します。
npn型の構成・回路図
npnトランジスタの構成と回路図を示します。
ベースのp型の厚みは、十分薄く設定されています。
正確に言うと、キャリア(ここでは電子)の拡散長より十分短く設定されている、ということになります。
拡散長は、半導体に注入された少数キャリアが、多数キャリアと再結合して、その数が \(1/e\) に減少するまでの距離として定義されます。簡潔に言うと、少数キャリアが再結合するまでに進める距離、ということになります。
npnトランジスタは、エミッタ接合に順バイアス、コレクタ接合に逆バイアスをかけて動作させます。
順バイアスはp側に \(+\) の電圧、逆バイアスは \(-\) の電圧をかけることを意味します。詳しくは、 n型・p型・真性半導体に関する記事で解説しています。
npn型のバンド図
エネルギーバンド図で動作原理を確認しましょう。
左図は電圧を印加していないときのバンド図です。
このとき、フェルミ準位 \(E_f\) が等しくなっているのがわかります。
一方、右側はエミッタ接合に順バイアス、コレクタ接合に逆バイアスをかけた時のバンド図です。
ベースの少数キャリアである電子が、エミッタ側から流入しているのがわかります。
流入した電子の一部は正孔と再結合し、ベース電流 \(i_\mathrm{B}\) を構成します。
しかし、ベースは薄く設定されているため、大部分はベースを通過して、逆バイアスが印加されているコレクタ接合に到達します。
コレクタ接合に到達した電子は、坂を下るようにコレクタへドリフトし、コレクタ電流 \(i_\mathrm{C}\) を構成します。
npn型の特性
npnトランジスタにおける電流や電圧の特性について解説します。
エミッタからベースへ流入する電子は、エミッタ接合の順バイアス \(v_{\mathrm{BE}}\) に依存し、pn接合ダイオードと同じように以下の式で表されます。
ここで、\(V_\mathrm{T}\) は熱電圧で、\(e\) を電気素量、\(k\) をボルツマン定数、\(T\) を絶対温度として、\(V_\mathrm{T} = kT/q\)で表されます。また、\(I_\mathrm{S}\) は逆方向飽和電流です。
熱電圧は、室温で \(25\,\mathrm{mV}\) となります。
電流増幅率 \(\alpha\)(current amplification factor)は、エミッタ電流 \(i_\mathrm{E}\) に対するコレクタ電流 \(i_\mathrm{C}\) で定義されます。すなわち、
で表されます。このとき、\(\alpha<1\) を満たします。
前述のとおり、エミッタから流入した電子の大部分がコレクタ側に流れるので、\(\alpha\) は \(1\) に近く、通常は \(0.95\sim 0.99\) 程度になります。
また、電流則より
を満たすことから、ベース電流 \(i_\mathrm{B}\) とコレクタ電流 \(i_\mathrm{C}\) は以下の関係で表されます。
ここで、\(h_{fe}\) はエミッタ接地電流増幅率を表します。
\(\alpha\) はベース接地電流増幅率に相当します。
pnpトランジスタ
ここでは、pnpトランジスタの構成・バンド図について解説します。
電流や電圧の特性に関しては、npn型と対応しているので、ここでは省略します。
pnp型の構成・回路図
pnpトランジスタの構成と回路図を示します。
npn型と同様、ベースのn型の厚みは、十分薄く設定されています。
動作時は、エミッタ接合に順バイアス、コレクタ接合に逆バイアスをかけます。
これはnpn型と同様ですが、n型とp型の組み合わせが逆になっているので、電圧の向きは逆になります。
pnp型のバンド図
エネルギーバンド図で動作原理を確認しましょう。
左図は電圧を印加していないときのバンド図です。
右側はエミッタ接合に順バイアス、コレクタ接合に逆バイアスをかけた時のバンド図です。
ベースの少数キャリアである正孔が、エミッタ側から流入しているのがわかります。
流入した正孔の一部は電子と再結合し、ベース電流 \(i_\mathrm{B}\) を構成します。
しかし、ベースは薄く設定されているため、大部分はベースを通過して、逆バイアスが印加されているコレクタ接合に到達します。
コレクタ接合に到達した正孔は、坂を下るようにコレクタへドリフトし、コレクタ電流 \(i_\mathrm{C}\) を構成します。
参考文献
- 松波弘之(1999)『半導体工学(第2版)』朝倉書店