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本記事の内容
本記事では、静電界中に置かれた導体の性質について解説しています。
- 静電場中の導体の性質
- 導体球・球殻導体・コンデンサの静電場
導体の性質
導体は、電気をよく通す物質のことです。
導体は下図のように、金属イオンの周りの電子が自由に動き回っていることで、その結晶構造を保っています。
この結合を金属結合、自由に動き回ることができる電子を自由電子といいます。
自由電子のおかげで、導体は高い導電率を有します。
導体と静電場
静電場中に置かれた導体は、以下の3つの性質を持ちます。
- 導体の内部に電場・電荷はない
- 電荷は導体の表面のみに分布
- 電場は導体表面に垂直
それぞれ、導体の性質とガウスの法則を用いて説明がつきます。
〈関連記事〉
ガウスの法則については、こちらで解説しています。
ガウスの法則とは?
導体内電場 = 0
導体の内部の電場は \(\bm{0}\) になります。
仮に導体内部の電場 \(\bm{E} \neq \bm{0}\) とすると、電荷は自由に動くことができるので、電場から力を受けて動きます。
そして、電荷が作る電場同士が打ち消しあって、最終的に \(\bm{E} = \bm{0}\) となるまで動き続けます。
したがって、静電場中では導体内部の電場は \(\bm{0}\) となります。
なお、ガウスの法則より、導体内の電荷の代数和を \(Q\) とおくと、
が成り立ち、導体内部の電荷も \(0\) になることが分かります。
加えて、 \(\bm{E} = -\nabla V\) より、電位 \(V\) は一定値、すなわち導体は等電位となります。
電荷は導体表面のみに分布
前述のとおり、導体内部の電荷は \(0\) になります。
しかし、導体にある電荷は導体の外へ抜け出すことはできません。
したがって、電荷は表面のみに分布することになります。
電場は導体表面に垂直
導体表面に分布した電荷は導体の外部に電場を作り、その向きは導体表面に垂直になります。
仮に電場の向きが導体に垂直でないとします。
すると、導体の接線方向にも電場が生じているため、電荷はその方向に動きます。
しかし、これは導体が等電位であることに反します(電場が電荷に仕事をするから)。
したがって、電場は導体表面に垂直になります。
例
導体球
電荷 \(Q\), 半径 \(a\) の導体球を考えてみましょう。
中心から半径 \(r\) の球を閉曲面 \(S\) としてガウスの法則を適用し、電場の大きさ \(E\) を求めてみましょう。
\(r<a\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内にあるため、 \(E = 0\) となります。
\(r\geq a\) のとき、閉曲面 \(S\) 内の電荷は \(Q\) です。
したがって、ガウスの法則より、
となります。
\(r\geq a\) のときの電場 \(E\) は、電荷 \(Q\) の点電荷を考えたときに等しくなります。
球殻導体
半径 \(a\) の球導体と、内半径 \(b\), 外半径 \(c\) の中心を同じくする球殻導体を考えます。
ただし、\(a<b<c\) とします。
なお、球導体は電荷 \(Q\) を帯びており、球殻導体に電荷はないものとします。
中心から半径 \(r\) の球を閉曲面 \(S\) としてガウスの法則を適用し、電場の大きさ \(E\) を求めてみましょう。
\(r<a\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内部にあるので、\(E=0\) となります。
\(a\leq r \leq b\) のとき、ガウスの法則より、
となります。
\(b\leq r \leq c\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内部にあるので、\(E=0\) となります。
ここで、球殻導体の内側に現れる電荷を \(Q_b\) とおくと、ガウスの法則より
となります。したがって、球殻導体の内側には、\(-Q\) の電荷が分布することが分かります。
なお、球殻導体の電荷は \(0\) だったので、それにつり合わせる形で球殻導体の外側に \(Q\) の電荷が分布します。
\(r\geq c\) のとき、ガウスの法則より、
となります。
もし、球殻導体を接地させた場合、球殻導体の外側に現れていた電荷 \(Q\) がグラウンドに流れるため、\(r\geq c\) において \(E=0\) となります。このように、帯電物を接地した導体で囲むことで、外部への影響を抑えることを静電遮蔽、静電シールドと呼びます。
〈関連記事〉
静電シールドについて、こちらのサイト(外部サイト)に分かりやすく解説されています。
【詳細説明】静電シールド(静電遮蔽)の原理とは?身近な例は?
平行平板コンデンサ間の電場
2つの導体を近接させておき、電荷を蓄えられるようにしたものをコンデンサといいます。
特に、2枚の導体板を平行に並べたものを平行平板コンデンサといいます。
以下では、平行平板コンデンサの静電場について考えます。
下図のように、面積 \(S\) の2枚の導体板 \(A,B\) を並べます。
各平板に電荷は一様に分布するので、面上のいたるところで電場の強さは同じになります。
なお、極板間の間隔は十分短く、板の幅は十分大きいので、コンデンサの端効果は無視できるとします。
コンデンサの端では、電気力線が外側に膨らみ、平板に対して垂直に進みません。
極板間の電界などを求めてみましょう。
電荷を各面で \(Q_1,Q_2,Q_3,Q_4\) とします。
一様に分布する面電荷がその両側に作る電界の大きさは \(E=\frac{Q}{2\varepsilon_0 S}\)と表されます。
〈関連記事〉
面電荷が作る電場は、こちらで解説しています。
ガウスの法則とは?
導体板の内部で作られる電場は \(0\) になるので、重ね合わせの計算により以下が成立します。
極板間の電界 \(E_{\mathrm{II}}\) は
と表せます。
コンデンサの外側における電界の大きさ \(E_{\mathrm{I}}, E_{\mathrm{III}} \) は等しく、
となります。
特に、両極板の電荷の和が \(0\)、すなわち \(\sum_{i=1}^4 Q_i = 0\) の条件が付け加わるとき、\(Q_1 = Q_4 = 0\) が成立します。
したがって、極板の外側の電界の大きさは \(E_{\mathrm{I}} = E_{\mathrm{III}} = 0\) となります。
参考文献
- Try IT,「5分でわかる!金属結合とは」,<https://www.try-it.jp/chapters-8873/sections-9025/lessons-9034/>, 2021年10月10日アクセス
- Lumen Learning, "Conductors and Electric Fields in Static Equilibrium", <https://courses.lumenlearning.com/physics/chapter/18-7-conductors-and-electric-fields-in-static-equilibrium/>, 2021年10月10日アクセス
- Electrical Imformation, 「【詳細説明】静電シールド(静電遮蔽)の原理とは?身近な例は?」, <https://detail-infomation.com/electrostatic-shield/>, 2021年10月10日アクセス
- 後藤憲一・山崎修一郎(1970)『詳解 電磁気学演習』共立出版