電磁気学

静電界中に置かれた導体の3つの性質[例題付き]

2021年10月10日

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本記事の内容

本記事では、静電界中に置かれた導体の性質について解説しています。

  • 静電場中の導体の性質
  • 導体球・球殻導体・コンデンサの静電場

導体の性質

導体は、電気をよく通す物質のことです。

導体は下図のように、金属イオンの周りの電子が自由に動き回っていることで、その結晶構造を保っています。

この結合を金属結合、自由に動き回ることができる電子を自由電子といいます。

自由電子のおかげで、導体は高い導電率を有します。

導体と静電場

静電場中に置かれた導体は、以下の3つの性質を持ちます。

  1. 導体の内部に電場・電荷はない
  2. 電荷は導体の表面のみに分布
  3. 電場は導体表面に垂直

それぞれ、導体の性質とガウスの法則を用いて説明がつきます。

〈関連記事〉

ガウスの法則については、こちらで解説しています。
ガウスの法則とは?

導体内電場 = 0

導体の内部の電場は \(\bm{0}\) になります。

仮に導体内部の電場 \(\bm{E} \neq \bm{0}\) とすると、電荷は自由に動くことができるので、電場から力を受けて動きます。

そして、電荷が作る電場同士が打ち消しあって、最終的に \(\bm{E} = \bm{0}\) となるまで動き続けます。

したがって、静電場中では導体内部の電場は \(\bm{0}\) となります。

なお、ガウスの法則より、導体内の電荷の代数和を \(Q\) とおくと、

$$ \int_S \bm{E} \cdot d\bm{S} = \frac{Q}{\varepsilon_0} = 0 $$
$$ ∴ Q = 0 $$

が成り立ち、導体内部の電荷も \(0\) になることが分かります。

加えて、 \(\bm{E} = -\nabla V\) より、電位 \(V\) は一定値、すなわち導体は等電位となります。

電荷は導体表面のみに分布

前述のとおり、導体内部の電荷は \(0\) になります。

しかし、導体にある電荷は導体の外へ抜け出すことはできません。

したがって、電荷は表面のみに分布することになります。

電場は導体表面に垂直

導体表面に分布した電荷は導体の外部に電場を作り、その向きは導体表面に垂直になります。

仮に電場の向きが導体に垂直でないとします。

すると、導体の接線方向にも電場が生じているため、電荷はその方向に動きます。

しかし、これは導体が等電位であることに反します(電場が電荷に仕事をするから)。

したがって、電場は導体表面に垂直になります。

導体球

電荷 \(Q\), 半径 \(a\) の導体球を考えてみましょう。

中心から半径 \(r\) の球を閉曲面 \(S\) としてガウスの法則を適用し、電場の大きさ \(E\) を求めてみましょう。

\(r<a\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内にあるため、 \(E = 0\) となります。

\(r\geq a\) のとき、閉曲面 \(S\) 内の電荷は \(Q\) です。

したがって、ガウスの法則より、

$$ \int_S \bm{E} \cdot d\bm{S} = 4\pi r^2 E = \frac{Q}{\varepsilon_0} $$
$$ ∴ E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \hspace{5mm} (r\geq a) $$

となります。

\(r\geq a\) のときの電場 \(E\) は、電荷 \(Q\) の点電荷を考えたときに等しくなります。

球殻導体

半径 \(a\) の球導体と、内半径 \(b\), 外半径 \(c\) の中心を同じくする球殻導体を考えます。

ただし、\(a<b<c\) とします。

なお、球導体は電荷 \(Q\) を帯びており、球殻導体に電荷はないものとします。

中心から半径 \(r\) の球を閉曲面 \(S\) としてガウスの法則を適用し、電場の大きさ \(E\) を求めてみましょう。

\(r<a\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内部にあるので、\(E=0\) となります。

\(a\leq r \leq b\) のとき、ガウスの法則より、

$$ \int_S \bm{E} \cdot d\bm{S} = 4\pi r^2 E = \frac{Q}{\varepsilon_0} $$
$$ ∴ E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \hspace{5mm} (a\leq r \leq b) $$

となります。

\(b\leq r \leq c\) のとき、閉曲面 \(S\) は導体内部にあるので、\(E=0\) となります。

ここで、球殻導体の内側に現れる電荷を \(Q_b\) とおくと、ガウスの法則より

$$ \int_S \bm{E} \cdot d\bm{S} = 0 = \frac{Q+Q_b}{\varepsilon_0} $$
$$ ∴ Q_b = -Q $$

となります。したがって、球殻導体の内側には、\(-Q\) の電荷が分布することが分かります。

なお、球殻導体の電荷は \(0\) だったので、それにつり合わせる形で球殻導体の外側に \(Q\) の電荷が分布します。

\(r\geq c\) のとき、ガウスの法則より、

$$ ∴ E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} \hspace{5mm} (r\geq c) $$

となります。

もし、球殻導体を接地させた場合、球殻導体の外側に現れていた電荷 \(Q\) がグラウンドに流れるため、\(r\geq c\) において \(E=0\) となります。このように、帯電物を接地した導体で囲むことで、外部への影響を抑えることを静電遮蔽、静電シールドと呼びます。

〈関連記事〉

静電シールドについて、こちらのサイト(外部サイト)に分かりやすく解説されています。
【詳細説明】静電シールド(静電遮蔽)の原理とは?身近な例は?

平行平板コンデンサ間の電場

2つの導体を近接させておき、電荷を蓄えられるようにしたものをコンデンサといいます。

特に、2枚の導体板を平行に並べたものを平行平板コンデンサといいます。

以下では、平行平板コンデンサの静電場について考えます。


下図のように、面積 \(S\) の2枚の導体板 \(A,B\) を並べます。

各平板に電荷は一様に分布するので、面上のいたるところで電場の強さは同じになります。

なお、極板間の間隔は十分短く、板の幅は十分大きいので、コンデンサの端効果は無視できるとします。

コンデンサの端では、電気力線が外側に膨らみ、平板に対して垂直に進みません。

極板間の電界などを求めてみましょう。

電荷を各面で \(Q_1,Q_2,Q_3,Q_4\) とします。

一様に分布する面電荷がその両側に作る電界の大きさは \(E=\frac{Q}{2\varepsilon_0 S}\)と表されます。

〈関連記事〉

面電荷が作る電場は、こちらで解説しています。
ガウスの法則とは?

導体板の内部で作られる電場は \(0\) になるので、重ね合わせの計算により以下が成立します。

$$ \begin{align} \frac{Q_1-Q_2-Q_3-Q_4}{2\varepsilon_0 S} &= 0 \\ \frac{Q_1+Q_2+Q_3-Q_4}{2\varepsilon_0 S} &= 0 \end{align} $$
$$ ∴ Q_1 = Q_4,\hspace{5mm} Q_2 = -Q_3 $$

極板間の電界 \(E_{\mathrm{II}}\) は

$$ E_{\mathrm{II}} = \frac{Q_1+Q_2-Q_3-Q_4}{2\varepsilon_0 S} = \frac{Q_2}{\varepsilon_0 S} $$

と表せます。

コンデンサの外側における電界の大きさ \(E_{\mathrm{I}}, E_{\mathrm{III}} \) は等しく、

$$ E_{\mathrm{I}} = E_{\mathrm{III}} = \frac{Q_1+Q_2+Q_3+Q_4}{2\varepsilon_0 S} = \frac{Q_1}{\varepsilon_0 S} $$

となります。

特に、両極板の電荷の和が \(0\)、すなわち \(\sum_{i=1}^4 Q_i = 0\) の条件が付け加わるとき、\(Q_1 = Q_4 = 0\) が成立します。

したがって、極板の外側の電界の大きさは \(E_{\mathrm{I}} = E_{\mathrm{III}} = 0\) となります。

参考文献

  1. Try IT,「5分でわかる!金属結合とは」,<https://www.try-it.jp/chapters-8873/sections-9025/lessons-9034/>, 2021年10月10日アクセス
  2. Lumen Learning, "Conductors and Electric Fields in Static Equilibrium", <https://courses.lumenlearning.com/physics/chapter/18-7-conductors-and-electric-fields-in-static-equilibrium/>, 2021年10月10日アクセス
  3. Electrical Imformation, 「【詳細説明】静電シールド(静電遮蔽)の原理とは?身近な例は?」, <https://detail-infomation.com/electrostatic-shield/>, 2021年10月10日アクセス
  4. 後藤憲一・山崎修一郎(1970)『詳解 電磁気学演習』共立出版

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