相対性理論

ミンコフスキー空間とローレンツ変換【特殊相対性理論】

2021年12月18日

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本記事の内容

本記事では、ミンコフスキー時空図とローレンツ変換について解説しています。

  • 4次元時空
  • ローレンツ変換の幾何学的解釈
  • ローレンツ不変量
  • ローレンツ収縮・時間の遅れ

〈関連記事〉

ローレンツ変換については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ローレンツ変換の使い方【特殊相対性理論】

4次元時空とローレンツ変換

特殊相対性理論におけるローレンツ変換は、以下で表されます。

ローレンツ変換
$$ \left\{ \begin{align} ct' &= \gamma (ct-\beta x) \\ x' &= \gamma(x-\beta ct) \\ y' &= y \\ z' &= z \end{align} \right. $$

ただし、\(\beta:=V/c, \,\gamma:=1/\sqrt{1-\beta^2}\) と定義しました。

この式で重要なのは、時間と空間座標が混合しているということです。

このことから、ミンコフスキー(Minkowski)は、空間座標 \((x,y,z)\) に時間を含めた \((x,y,z,ct)\) という座標で指定される4次元時空(spacetime)を提案しました。

\((x,y,z,t)\) でもよいですが、\(ct\) とすることで、全て長さの次元になり、記述がきれいというメリットがあります。

その空間はミンコフスキー時空と呼ばれます。

ミンコフスキー時空内の1点 \((x,y,z,ct)\) は、世界点(world point)と呼ばれ、世界点の動く軌跡は、世界線(world line)と呼ばれます。

ローレンツ不変量と距離

以下で定義される量は、ローレンツ変換に対して値を変えないローレンツ不変量になっています。

ローレンツ不変量
$$ s^2 := x^2 + y^2 + z^2 - (ct)^2 $$

実際にローレンツ変換の式を代入することで、確かめてみましょう。

\(y,z\) に関しては、変換前後で変わらないので、\(x,t\) のみに着目して考えます。

$$ \begin{align} x'^2 - (ct')^2 &= \gamma^2(x-\beta ct)^2 - \gamma^2 (ct-\beta x)^2 \\ &= \gamma^2(1-\beta^2)(x^2-(ct)^2) \\ &= x^2 - (ct)^2 \end{align} $$

したがって、確かにローレンツ不変量になっていることが分かります。

もし、\(s^2\) の \((ct)^2\) の項がなければ、\(s^2\) は通常の3次元ユークリッド空間の距離の2乗を表します。

このことから、\(s^2\) を4次元時空における距離の2乗と考えます。

ミンコフスキー時空図

以下では便宜上、\(w:=ct\) とします。このとき、ローレンツ変換の式は、以下のようになります。

ローレンツ変換 (\(w=ct\) とした)
$$ \left\{ \begin{align} w' &= \gamma (w-\beta x) \\ x' &= \gamma(x-\beta w) \\ y' &= y \\ z' &= z \end{align} \right. $$

ミンコフスキー時空図では、横軸を空間 \(x,y,z\)、縦軸を時間 \(w\) に取ります。

しかし、4次元を図示することはできないため、通常は \(x\) のみを横軸に取ります。

ここで、原点から発射した光の世界線について考えると、傾き \(\pm 1\) の直線となります。

物体は光の速度を超えないので、物体の世界線は、\(w\) 軸を回転軸とした円錐の内側を動きます。

円錐は光円錐(light-cone)と呼ばれます。

ローレンツ変換の幾何学的解釈

\(S\) 系に対して、\(x\) 軸正方向に一定の速度 \(V\) で動く \(S'\) 系の座標軸が、ミンコフスキー時空図上でどのように表されるかを考えてみましょう。

まず、\(w'\) 軸について考えます。\(w'\) 軸上では、\(x'=0\) となるので、ローレンツ変換の式より、

$$ \begin{align} 0 &= \gamma(x-\beta w) \\ ∴ w &= \frac{1}{\beta} x \end{align} $$

となり、傾き \(1/\beta\) の直線で表されることが分かります。

同様に、\(x'\) 軸上では、\(w'=0\) なので、

$$ \begin{align} 0 &= \gamma(w-\beta x) \\ ∴ w &= \beta x \end{align} $$

となり、\(x'\) 軸は傾き \(\beta\) の直線で表されることが分かります。

ミンコフスキー時空における単位格子

\(S'\) 系における単位格子(一辺の長さが \(1\) の方形)を考えます。

まず、\((x', w')=(1,0)\) となるのは、ローレンツ変換の式より

$$ \begin{align} 1 &= \gamma(x-\beta w) \\ 0 &= \gamma(w-\beta x) \end{align} $$

これを解いて

$$ ∴ \hspace{3mm} (x,w) = (\gamma, \beta\gamma) $$

が得られます。

同様に、\((x', w')=(0,1)\) となるのは、ローレンツ変換の式より

$$ \begin{align} 0 &= \gamma(x-\beta w) \\ 1 &= \gamma(w-\beta x) \end{align} $$

これを解いて

$$ ∴ \hspace{3mm} (x,w) = (\beta\gamma, \gamma) $$

が得られます。

これを図示すると、以下のようになります。

ユークリッド平面で描くと、それぞれの単位長さは異なって見えます。しかし、これはミンコフスキー時空における距離の定義が異なるためです。

ローレンツ収縮

\(S'\) 系に固定された物体は、その運動方向に縮んで観測されます。これをローレンツ収縮(Lorentz contraction)といいます。

ミンコフスキー時空図でローレンツ収縮を幾何学的に解釈してみましょう。

\(S'\) 系の \(x'\) 軸正方向に静止した長さ \(1\) の棒は、図の赤線で表され、時刻 \(t'\) と共に矢印の方向に進みます。

棒の長さ \(1\) は、\(S'\) 系から測定した長さです。

この棒を \(S\) 系で測定すると、その長さはいくらになるでしょうか。

\(S\) 系の時刻 \(t=0\) で棒を測定することを考えると、棒は図の緑線として観測されます。

図より、\(S\) 系の \((x,w)=(1,0)\) より短くなっていることが分かります。

具体的に端点の座標を求めると、\((x,w) = (1/\gamma,0)\) となります。

つまり、\(S\) 系から観測すると、棒の長さは \(1/\gamma\) 倍になるのです。

単位格子上の点 \((x,w)=(\gamma,\beta\gamma)\) を通り、\(w'\) 軸に平行な直線の式は $$ w=\frac{1}{\beta}(x-\gamma) + \beta\gamma $$ と表せます。\(x\) 軸との交点を求めるには、\(w=0\) を代入して $$ x=\frac{1}{\gamma} $$ を得ます。


次は逆に、\(S\) 系に固定した長さ \(1\) の棒が、\(S'\) 系からどのように観測されるかを見てみましょう。

\(S\) 系の \(x\) 軸正方向に静止した長さ \(1\) の棒は、図の赤線で表され、時刻 \(t\) と共に矢印の方向に進みます。

\(S'\) 系の時刻 \(t'=0\) で棒を測定することを考えると、棒は図の緑線として観測されます。

図より、\(S'\) 系の \((x',w')=(1,0)\) より短くなっていることが分かります。

棒の端点の \(S\) 系における座標は \((x,w)=(1,\beta)\) となります。

ローレンツ変換の式より、

$$ \begin{align} x' = \gamma(1-\beta^2) \end{align} $$
$$ ∴ \hspace{3mm} x' = \frac{1}{\gamma} $$

となり、\(S'\) 系から測定した場合でも、棒の長さは \(1/\gamma\) 倍されることが分かります。

ローレンツ不変量 \(s^2\) を用いて考えることもできます。 $$ s^2 = x^2 - w^2 = x'^2 - w'^2 $$ ここで、\(x=1, w=\beta, w'=0\) を代入して $$ x'^2 = 1-\beta^2 $$ $$ ∴ \hspace{3mm} x' = \sqrt{1-\beta^2} = \frac{1}{\gamma} $$

時間の遅れ

\(S'\) 系の原点に固定された時計を、\(S\) 系から測定することを考えましょう。

図の赤線が、時計の世界線になります。

先ほど求めた単位格子より、\(S'\) 系における \(w'=1\) は、\(S\) 系の \(w=\gamma\) で観測されることが分かります。

したがって、動いている時計が、静止している時計に比べて遅れていることが分かります。


逆に、\(S\) 系の原点に固定された時計を、\(S'\) 系から測定することを考えましょう。

\(S\) 系から観測して \(w=1\) のときの \(S'\) 系の座標値は、緑の点線と \(w'\) 軸の交点に相当します。

交点の \(S\) 系における座標値は \((x,w) = (\beta\gamma^2, \gamma^2)\) となります。

これをローレンツ変換の式に代入して、\((x',w') = (0,\gamma)\) を得ます。

したがって、先ほどと同様に、\(S\) 系における \(w=1\) は、\(S'\) 系の \(w'=\gamma\) で観測されることが分かります。

参考文献

  • 風間洋一(1997)『相対性理論入門講義』培風館

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