書籍紹介

【大学生向け】電気回路理論の勉強にオススメの教科書[実験レポートにも使える]

2023年5月12日

  • 大学で電気回路の実験をやったけど、原理がよく分からない!
  • 電気系の学生だけど、どの参考書から始めればいいか分からない!
  • 将来的に電気主任技術者の資格が欲しい!

そんな方におすすめしたい、初学者向けの電気回路理論の教科書がこちらです!


オススメする3つの理由

電気回路の基礎実験の原理がわかる

『エース 電気回路理論入門』(以下、本書)は、過渡現象や交流回路の解析など、電気回路の基礎実験で扱う回路の理論について分かりやすく書かれておりオススメです!

理工系の学生は、1年生のときに電気回路の基礎実験を行った人も多いと思います。

実際、電気系の学部を卒業した私も、1年生のときに電気回路の実験を行い、解析や実験レポートの作成を行いました。

過渡現象を確かめる回路としては、下図のRC直列回路が有名です。

RC直列回路

例として、コンデンサの電圧を求めてみましょう。

コンデンサの初期電荷はないものとし、時刻 \(t=0\) でスイッチをONしたとき、\(t>0\) における回路方程式は、コンデンサの電圧 \(v_C(t)\) を用いて次式の微分方程式で与えられます。

$$ E = RC\dfrac{\dd v_C}{\dd t} + v_C $$

これを解いて、

$$ v_C(t) = E\left(1-\ee^{-\frac{t}{RC}}\right)\qquad (t>0) $$

を得ます。

上式を導くには、微分方程式の解法について理解している必要がありますが、当時の私はその理解が十分でなく、苦戦したのを覚えています。

また、下図のRLC交流回路も実験でよく扱われます。

RLC交流回路

この場合のコンデンサの電圧はどのように表されるでしょうか。

コンデンサの電圧 \(v_C(t)\) を用いて回路方程式を立てると、次式の2階微分方程式が得られます。

$$ E\cos{\omega t} = LC\dfrac{\dd^2 v_C}{\dd t^2} + RC\dfrac{\dd v_C}{\dd t} + v_C $$

これを解いて、

$$ v_C(t) = \dfrac{E}{\sqrt{(1-\omega^2 LC)^2 + (\omega RC)^2}}\cos{(\omega t - \phi)} $$

を得ます。ただし、

$$ \phi = \arctan{\left(\dfrac{\omega RC}{1-\omega^2 LC}\right)} $$

です。

こちらはRC直列回路よりも解法が複雑で、数学的な準備が十分でない1年生のときは、苦戦する傾向が高い箇所です。

本書は、上記の過渡現象や交流回路の理論を理解するのに必要な微分方程式の解法から丁寧に解説されているため、電気回路の基礎実験の原理の理解に役立ちます。

私自身、1年生のときに本書で電気回路の基礎理論を学んだことで、基礎実験のレポートをスムーズに作成することができました。

本書は、電気系の学生はもちろんのこと、電気回路の実験を行う理工系の学生にもオススメできる1冊です!

初学者でも理解しやすい

本書は、回路理論で重要になる複素数の基本事項や微分方程式の解法についても丁寧に解説されているため、初学者でも分かりやすい内容になっています。

複素数については、オイラーの公式はもちろんのこと、複素数同士の乗算や複素数の微分などにも触れられています。

$$ \ee^{\jj\theta} = \cos{\theta} + \jj\sin{\theta} \tag{オイラーの公式} $$

通常、虚数単位には \(\mathrm{i}\) を用いますが、電気系は電流 \(i\) との混乱を避けるため、\(\jj\) を虚数単位とするのが慣習です。

高校の物理で学習する交流回路では、複素数が登場しません。

しかし、電気系エンジニアにとって、複素数を用いた電圧・電流の表現、いわゆるフェーザ理論は極めて重要です。

例えば、振幅 \(V\)、角周波数 \(\omega\)、初期位相 \(\theta\) の正弦波として表される電圧 \(v(t) = V\sin{(\omega t+\theta)}\)のフェーザは、その振幅と位相から

$$ \dot{V} = V\ee^{\jj\theta} $$

と表され、\(\ee^{\jj\omega t}\) を乗算したものの虚部(imaginary part)を取ることで瞬時値へ変換されます。

$$ v(t) = \mathrm{Im}\left[\dot{V}\ee^{\jj\omega t}\right] $$
左図:複素平面上に表したフェーザ、右図:フェーザに\(\ee^{\jj\omega t}\) を乗算して虚部を取ると瞬時値へ変換される

高校で習う交流回路では、電圧の振幅と位相をベクトルで表すためベクトル図と呼ばれますが、本質的にはフェーザと同じです。高校の学習範囲では、複素関数を扱うことができないことから、そのように呼んでいると思われます。

本書は、過渡現象や交流回路の解析に必要となる微分方程式の解法に加えて、交流回路の理論を理解するのに必要な複素数の基本について、1章分を割いて書かれているため、大学の数学に慣れていない人でも学習しやすくなっています。

なお、回路の解析に必要な解法に限定されているため、自然と回路理論の習得に集中できる構成になっています。

本書は、初めて大学レベルの電気回路理論に触れる方にオススメです!

演習問題が豊富にある

本書は、電気回路理論の理解を助けるための例題と演習問題が合計125題記載されており、演習を通じて知識を定着させることができます!

私自身も大学1年生のときに本書の演習問題を一通り解き、回路理論の基礎を固めました。

私自身がそうですが、理論を見聞きするだけで理解できる人は少数派だと感じます。

大抵の方は、演習を通じて理論を使うことで、改めて理論の理解を深めることができます。

その点で、演習問題が多く記載されているのは、大きなメリットであると考えます。

なお、本書の最後には、演習問題の解説と解答が記載されているため、自力で解くことができなくても大丈夫です!

電気主任技術者の過去の試験問題が10問採用されている点もオススメできる理由の一つです!

本書で回路理論を学べば、電気主任技術者の試験問題にも対応できる力が付くでしょう。

本書は、回路理論の理解を助けるための演習問題が豊富に記載されており、回路理論の基礎を定着させたい人にオススメです!

『エース 電気回路理論入門』の基本情報

著者は、京都大学名誉教授の奥村浩士(おくむら こうし)先生です。

『エース 電気回路理論入門』(以下、本書)では、下記の内容を扱っています。

  • キルヒホフの法則
  • オームの法則
  • テブナン・ノートンの定理
  • 重ね合わせの原理
  • 双対な回路
  • 電力と電力量
  • キャパシタとインダクタ
  • 簡単な回路の微分方程式
  • 複素数
  • オイラーの関係式
  • 同次方程式の解法と過渡現象
  • 非同次方程式の解法と過渡現象
  • 交流回路の微分方程式の解法
  • 正弦波交流
  • 実効値と平均電力
  • フェーザ表示
  • インピーダンスとアドミタンス
  • 共振回路
  • ブリッジ回路
  • 交流の電力
  • 複素電力、有効電力、無効電力
  • 二端子対回路
  • スターデルタ変換

上記は目次から一部抜粋したもので、本書で扱っている内容の全てではありません。

キルヒホフの法則のような初歩的な内容から、過渡現象や交流回路の解析に必要不可欠な微分方程式の解法まで、電気回路理論の基礎事項が包括的に扱われています。

下表に本書の基本情報を示します。

項目
ページ数1 155 ページ
2 171 個
数式3 495 個
例題・演習問題 125 題
『エース 電気回路理論入門』の基本情報(運営者調べ)

1 第1章から索引までのページ数を示しています。

2 演習問題の図を含みます。

3 値は別行立ての数式の合計であり、インラインの数式および演習問題とその解答に記載されている数式を含みません。

ページ数は155ページで、全8章で構成されています。

マンガのようなイラストこそありませんが、理論を説明するための図が多用されており、初学者でも読み進めやすいように配慮されています。

数式も多用されており、理論を正しく理解できるように記述されています

例題と演習問題は合わせて125題あり、そのうち10題は電気主任技術者の過去の試験問題から出題されています(運営者調べ)。

まとめ:『エース 電気回路理論入門』は初学者にオススメの教科書

『エース 電気回路理論入門』は、以下の特徴を持った電気回路理論の専門書です。

  • RC回路やRLC交流回路など、電気回路の実験でよく扱われる回路の理論を学べる
  • 電気回路理論に必要な数学の丁寧な解説があり、初学者に優しい
  • 合計125題の問題で理解を深めることができる

特に、理工系の大学1年生これから電気回路を専門に扱う人にオススメです!


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